婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
ああ〜、もうわからない。

どちらにしろ、私が拓海さんの話を受ければ、父は助かるし、母も不幸にならずにすむ。

これは……私を大切に育ててくれた両親のためだ。

そう思えば、苦も苦でなくなるはず。

期限は明日。

でも、明日まで回答を持ち越したら、また私は迷うに違いない。

ジャケットの中に入れておいた拓海さんの名刺を取り出すと、バッグからスマホを出した。

彼の携帯の番号を入力するが、手が震えてうまくいかない。

落ち着くんだ。しっかりしろ。

自分を叱咤して何とか入力した。

私にしか父は救えないんだ。

覚悟を決めて発信ボタンをタッチする。

ツーコールで相手が出た。

【はい】

拓海さんは名前を言わずに返事だけする。

心臓がバクバクいっている。

ハーッと大きく息をすると、自分の名を口にした。

「……瑠璃です」
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