婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
【よお、意外に早かったな?どうするか決まったか?】

拓海さんは楽しげに聞いてくる。

このまま電話を切ってしまおうか?

この期に及んで返事をするのを躊躇った。

だが、父が警察に手錠をかけられる姿が脳裏に浮かび、諦めた。

「……拓海さんの言う通りにします」

『愛人』と言いたくなくてそう答えたら、私を嘲笑うかのように彼はその言葉を強調した。

【つまり、俺の愛人になるってことだな?】

胸がズキンと痛む。

もう引き返せない。

私は……玲人君を裏切るのだ。

下唇を強く噛みながら認めた。

「……はい。その代わり、父を守ると約束して下さい」

【ああ、勿論だ。約束してやる】

拓海さんの返事を聞いてホッと胸を撫で下ろす。

これで、父は助かった。

【早速だが、明日から愛人になってもらおうか。お前のためにとびきりいいホテルを予約してやろう】
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