婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
トボトボと力なく歩いてようやくマンションに着く。

鍵をガチャッと開けて中に入れば、玲人君が息急き切って玄関に現れた。

ぼんやりする頭で思う。

どうして私よりも先に彼が家に帰っているんだろう。

「なんでそんなずぶ濡れになってんの?」

私を一目見るなり、血相を変える彼。

「……歩いて帰って来たから」

他人事のようにポツリと呟けば、玲人君は声を荒げて怒った。

「こんな雨の中傘をささずにうちまで歩いて帰るって、馬鹿か!」

「……ごめんなさい」

俯いて謝ると、急にふわりと身体が浮き上がった。

「玲人……君?」

驚いて顔を上げれば、玲人君が私を抱き上げ、私の履いていた靴を素早く取って玄関の床に落とす。

「こんなに身体冷たくして……。定時で上がったはずなのに何時間外歩いてた?もう九時だよ」

玲人君は私を説教しながら、バスルームへ向かう。
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