婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「また俺の分も餌あげるよ。約束する」

玲人君は急に真剣な顔でそう告げると、私に顔を近づけてそっと口付けた。

その優しいキスに涙が出そうになる。

お願い。今は堪えて。

ここで泣いたら彼に変に思われる。

必死に自分に言い聞かせて涙を堪えた。

玲人君はキスを終わらせると、私の頭を撫でる。

「朝食作ってくる。何がいい?」

「自分で適当に作るからいいよ」

どうせ食欲なんてないのだ。

首を横に振って断るが、彼はニヤリとして言い張る。

「じゃあ、俺が適当に作る」

とことん私に優しい彼。

甘く微笑んで、寝室を出て行った。

玲人君がキスした唇にそっと触れる。

今のがきっと彼との最後のキスだ。

この幸せな時間もあとわずか。

静かに目を閉じて耳を澄ませば、雨の音が聞こえた。

今日も雨……か。

まるで私の心の中……みた……い。
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