婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
涙が止めどなく溢れ出し、ポタポタと落ちて便箋を濡らす。

何度も書いてはボツにし、五枚目でようやく書き終わるも、その文面は短く他人行儀。

【玲人君へ
ごめんなさい。婚約を解消します。今までありがとうございました。瑠璃】

でも、これでいい。

理由や説明を書けば、どこかに私の感情が出てしまう。

私の彼への感情は凍らせなければいけない。

未練を残すな。

彼を心配させてしまう。

ペンを置くと、テーブルに置いておいたスマホがブルブルと震えた。

画面の表示を見れば、それは拓海さんの携帯の番号だった。

スマホを手に取り、緊張しながら通話ボタンをタッチする。

【俺だ。今日会う場所だが、赤坂の九条ホテルだ。中にあるイタリアンレストランを予約したから七時に来い】
< 229 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop