婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
『赤坂の九条ホテル』と聞いて動揺せずにはいられなかった。

そこは、昨日式典を行ったホテルだ。

都内にはホテルが他にもあるのに、わざわざ九条のを選ぶところが拓海さんらしい。

彼は意地悪だ。

それで私が苦しむのを楽しむつもりなのだろう。

「はい。わかりました」

怒りを抑えながら返事をしてブチッと電話を切る。

スマホの画面は十二時十一分と表示されている。

ボーッとしてたら時間なんてあっという間に過ぎてしまう。

今日は玲人君は夜接待のはずだけど、夕方までに掃除をして自分の荷物をまとめなくては……。

テーブルの上に退職願と彼への手紙を並べておいた。

これを彼が読む時、私はもうここにはいない。

時間をかけて掃除をすませると、寝室に行き、クローゼットからスーツケースを取り出して、服を詰めていった。
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