婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「いらないです」

さっさとすませて早く帰りたい。

帰りたい?

何考えてるんだろ、私。

帰る場所なんてもうないのにね。

食後のカプチーノを飲み終わると、拓海さんは私の肩を抱いてエレベーターに乗り客室に向かう。

部屋は三十七階にあるエグゼクティブスイートだった。

広いリビングに豪華な家具、そしてガラス張りの窓からは東京の摩天楼が一望出来る。

玲人君と一緒に来たのなら喜べただろうが、部屋を見ても気が重くなるだけだった。

リビングを通って寝室に行くが、キングサイズのベッドを見て身体が硬直した。

枕がふたつ並んでいるのを見てギョッとする。

なんだか生々しく感じた。

これから拓海さんに抱かれるのかと思うとゾッとする。

さっさと済ませたいと思ったけど、やっぱり無理だ。

彼とベッドに入るなんて嫌だ。
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