婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
真剣な目で告げて、玲人君は私の身体を強く抱き締める。

躊躇いながらその背中に腕を回すと、彼に謝った。

「……ごめんなさい」

「本当にそう思うなら、ずっと俺の側から離れるな」

いつもと違い、彼は強い口調で言う。

「うん。……約束する」

どれくらい抱き合っていたのだろう。

玲人君は抱擁を解くと、スーツの内ポケットから封筒を二枚取り出した。

それは、私が書いた手紙と退職願だった。

気まずくてオドオドする私の前で、彼は封筒ごと破り捨てる。

「これは必要ないから。よく聞いて、瑠璃。婚約解消なんてしない。俺は何があっても瑠璃を手放さないよ。今もこれから先もずっと」

私の両肩に手を置き、彼はまっすぐな目で伝えた。

「どうしてここにいるのがわかったの?」

玲人君がすぐにこの部屋に入って来たのが気になった。
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