婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
実際カーッと身体の熱が上がってきて、頭がボーッとしてきた。

ダメ……限界。

「れ……玲人……君、もう……離して」

やっとのことでそれだけ口にすると、玲人君は抱擁を解いて無表情で告げる。

「うちの社員は、痴漢対策に研修で護身術を習う」

「え?そうなの?でも……私、研修受けてない」

驚きの声を上げれば、玲人君は痛い子でも見るような目で私を見た。

「嘘だよ」

「え?」

意味がわからずキョトンとすれば、彼に頭を軽く小突かれた。

「護身術の研修なんかない。この程度の嘘も見抜けないんじゃ、まだまだだね」

私に向けられるその厳しい視線。

暗に彼は”お前は世間知らず”と言っているのだ。

「それは……玲人君が嘘つくなんて思わなかったから」

彼から視線を逸らして弁解する。

「とにかく、電車通勤なんて許可出来ない。そもそも俺と同じ場所に行くのに別々で行く必要ないよ」
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