婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「何、馬鹿なこと言ってるの?」

玲人君は目を丸くするが、込み上げてくる激情はもう抑えられない。

「……玲人君は、前田さんが好きなんだよね」

辛かったけど、喉の奥から声を絞り出す。

「……なんでそうなる」

唖然とした顔になる彼。

きっと図星を指されて驚いているんだ。

ずっと待たせてごめんなさい。

今、あなたを解放してあげるよ。

「玲人君、婚約解消して下さい!」

言った。ついに言った。

すぐに緊迫した静寂が私達を包んで、私は肩で大きく息をする。

聞こえるのは私の息の音だけ。

彼は黙ったまま。

今までずっと言えなかったけど……、悔いがないと言えば嘘になるけど……、これであなたは幸せになれる。

部外者は身を引けばいい。

さあ、”わかった”って返事をしてよ。

固唾を呑んで答えを待つが、私が期待した言葉を彼は紡がなかった。

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