婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「瑠璃、落ち着いて」

彼の冷静な声が、余計に私をイライラさせる。

「充分落ち着いてるよ!」

「落ち着いてなかったら、なんでそんなに泣いてるのかな?」

穏やかな声で言われて初めて気づく。

いつの間にか涙で頰が濡れていた。

視界も涙でだんだんぼやけてきて……。

「泣いてない!見ないで!」

ギュッと目をつぶり、顔を横に向ける。

「嘘つき」

ボソッと私に向かって呟いたかと思ったら、彼が私に覆い被さってきて、私の唇を奪った。

それは、何か罰を与えるような強引で激しいキス。

逃げようとしても、彼は私の両手をシーツに縛りつけるように押さえている。

婚約解消って言えば喜ぶはずじゃない?

なのに、なんで……怒ってるの!

もう、わけがわからないよ。

しゃくり上げながら泣けば、玲人君はハッと息を呑んで、今度は私の頰をつたる涙を拭いながら優しく口付ける。
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