婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました

私の手を引いて会議室を出る玲人君。

そのままスタスタ歩き出すので、立ち止まって声をかけた。

「あの……玲人君……手離して」

このまま会社の中を歩かれては、目立ってしまう。

それに……彼に謝らなきゃ。

「ああ。つい癖で」

玲人君は自分の手を見てパッと離す。

「……あとね、前田さんのこと勝手に誤解しちゃってごめんなさい」

玲人君に向かって深々と頭を下げる。

前田さんが小鳥遊さんと付き合ってるのを知っても彼は全然ショックを受けていなかった。

前田さんのことを好きだったらあんな反応はしない。

ひょっとして、私にふたりの仲を教えるためにわざと隠れたんじゃないだろうか？

彼は何も悪くないのに、自分の思い込みで一方的に責めて……私って本当に馬鹿だ。

私に文句のひとつくらい言ってもいいはずなのに、彼はクスッと笑ってみせた。