女の賞味期限
「あの、大丈夫ですか?」

こんな場所で泣かれたら、店員さんも困るわよ。

遥香、しっかりしなきゃ。

私は、右手で涙を拭いた。



「ああ、DVD壊れていないようです。」

私は持っていたDVDを、店員さんに渡した。

「いや、DVDじゃなくて、あなたが……」


私は、顔を上げた。

目の前には、私よりも年下の若い店員さんが、私をじっと見ている。

「はい……」

なんだかその優しさが、心の傷に染みて、また涙が止まらなくなった。


この店員さんは、大事な商品よりも私の事を気にかけてくれた。

人の優しさに触れると、涙が出ると言うのは、本当だったんだ。


するとその若い店員さんは、ズボンのポケットをガサゴソと漁り始めた。

「はい。」

差し出されたのは、ハンカチだった。

「あっ、アイロン掛けてないだけで、ちゃんと洗濯はしてあります。」

それが可笑しくて、私は思わず笑ってしまった。


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