君がいた季節
「なんだ。おまえのほうが早かったんだな」
30分ほど遅れて店に到着した俺の目の前には、遅れると言っていた三井の姿があった。
「思ってたより早く済んじゃって。時間前に着いちゃいました。お先です」
そう言って三井が傾けたグラスの中身は、ほとんど空に近い状態だった。
「お疲れ様です。遅かったですね」
三井の隣に座っていた彼女が、正面に座った俺にメニューを差し出した。
「あ、うん。なかなか頑固なオヤジでさ。同じこと、何度も説明させられて」
受け取ったメニューをパラパラめくっていると、既にテンションの高い千春にメニューを取り上げられてしまった。
「私もついでに頼もーっと。あ、野村くんは?」
野村は申し訳なさそうな顔で俺を見てから、
「あ、じゃあ…」
グラスの中身を一気に飲み干すと、千春が手にしているメニューをのぞきこんだ。