君がいた季節
「俺は、ビール」
ネクタイを軽く緩めながら言った俺に、彼女が、
「他にも何か頼みますか?」
もう一冊あったメニューを広げ、問う。
彼女の隣で黙々と口を動かしていた浅田が、
「私、これと同じのが食べたい!」
皿にひとつだけ残されたコロッケを指さす。
「浅田……。お前、どんだけ食うんだよ」
三井が呆れた表情でそう言うと、浅田は、
「だって、お腹が空いてるんだもん。しょうがないじゃないですか」
右の頬を膨らませ、口の端を指で拭った。
「えっと…、それって、何でしたっけ?」
メニューと皿を交互に見る彼女。
「カニクリームコロッケだよー。半分こする?」
浅田は自分の皿にそれをのせると、箸で半分に割った。