君がいた季節


空になっていたグラスをテーブルの端に追いやった俺が、

「ビール」

と短く返事をすると、千春が小さく息を吐き出したのがわかった。

「なんだよ」

「えー?べつにー」

意味ありげな表情をして肩をすくめた千春は、

「そうだ。来月の飲み会、どこでやろっか」

ふいっと俺から視線を外し、煙草に火をつける。

千春の、ゆっくりと煙を吐き出す姿を目にして、俺も最後の一本を口にくわえた。


「そういえばアヤちゃんが、どこの店だったかなぁ…。『料理、おいしかったですよ。また行きたいなぁ』って。えぇっと……、なんて名前だっけなぁ。教えてもらったのに」

酔いが回ってきたのか眠そうな目で何度も瞬きを繰り返す三井の言葉に、千春は、

「じゃあ、そこに決定!あとヨロシク」

そう言って野村の肩をポンポンと叩くと、

「了解です」

野村は大きく頷いた。

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