君がいた季節
「この前、本屋で偶然元カノに会っちゃって」
「えーっ。マジっすか?」
「三井さんて、彼女いたことあるんですか?」
「……おいおい。それ、ひどくね?」
三井たちの会話を、右側に突き刺さるような視線を感じつつ聞いていたのだけれど、たまらず、
「なに?」
と右を見た。
「なに、って」
目を細めて煙を吐き出した千春は、俺の顔をしばらく眺めたあと、
「どうするのかな、と思って」
と言って煙草の灰を灰皿に落とした。
「なにを?」
そう尋ねた俺をチラリと見た千春。
いつもと様子の違う千春から、一体どんな言葉を聞かされるというのか、全く見当もつかないのだけれど。
なんとなく、嫌な予感がした。
千春は視線を灰皿に置いたまま、ふぅっと息を吐き出すと、
「アヤちゃんのこと」
と、彼女の名前を口にした。