君がいた季節

「このメンバーは当然ですけどね。社内でも、もしかしたら気づいてる人間がいるかもしれないですよ」

三井がグラスを左右に揺らすと、中の氷がカラカラと音を立てる。

「あんた、わかりやすいんだもん」

千春が灰皿に煙草を押し付けながらフッと鼻で笑うと、火照った顔をメニューでパタパタと扇いでいた野村が、

「アヤちゃんは気づいてるんですかね」

と言った。

その言葉に、俺の心臓が再び跳びはねる。


「もし気づいてないとしたら…。かなりの鈍感、ですよね」

浅田はビールをひとくち飲むと俺の顔色を窺うようにこちらを見た。


「あんたの気持ち、知ってて知らないフリしてるのかもね」

千春が軽く首をかしげ、いたずらに笑う。


「そんなこと……」


そんなこと、考えてもみなかった。

この想いが彼女に伝わることは、一生ないと思っていたから。