君がいた季節

「はぁー」

と、大きく息を吐き出した俺の手から吸いかけの煙草を抜き取った千春。

随分と短くなってしまった煙草の火を、気を利かせて消してくれたのだ。

悪い、と礼を言った俺は、組んだ腕をテーブルに乗せた千春に決断を迫られた。


「さぁ、どうする？」


「………どうする、って」


千春の言いたいことはわかる。


でも、そんなの答えられるわけないだろう。

答えてしまったら、認めたことになる。


ここで認めてしまえば、今まで通りにいかなくなることは目に見えてる。

だからこそ。


「勘違いしてない？」

そう言ったんだ。


俺の言葉に誰もが目を丸くした。

千春にいたっては、往生際が悪いとでも言いたげな表情だ。


「そりゃ、アヤちゃんは可愛いし。気配りもできるし、仕事も早い。いい子だと思うけど。
でも、それだけだよ。それ以上の感情なんてない」