君がいた季節
「だけど、……っ」
その後に続く言葉を飲み込んだ千春。
その続きを聞きたくなかった俺は、
「俺の気持ちがどうだとか、勝手なこと言って面白がるなよ」
そう言って千春をなだめるように千春の肩に手を置いた。
しばらくの沈黙のあと、
「言えばいいのに」
三井が、俺の耳に届くか届かないかというくらいの声でポツリと呟く。
「言っちゃえばいいんだ。全部」
「…………」
千春たちの言葉が頭の中で何度も何度も繰り返される。
『アヤちゃんが好きなんでしょ?』
『みんな、時田さんの気持ちに気づいてますから』
『アヤちゃんは気づいてるんですかね』
『あんたの気持ち、知ってて知らないフリしてるのかもね』
彼女は気づいているのだろうか。
気づいてしまったのだろうか。
俺の気持ちに。
「いい加減なことを言うなって言っただろ。
煙草、買ってくる」
俺は空になった煙草の箱を握り潰し、席を立った。