君がいた季節
「おはよう」
朝一番に彼女の姿を探して声をかける。
既に仕事に取りかかっていた彼女は、心配そうな表情で俺を見上げる。
「おはようございます。一昨日は大丈夫でした?飲み過ぎたって言ってたけど」
「ははは。大丈夫だよ。
あ!そうそう。これあげる」
俺はわざと思い出した素振りで、手にしていた袋を差し出した。
中を確認する彼女の表情が明るくなったのを見て、つられて俺も笑顔になる。
「いいんですか?こんなにも。わーい。休憩時間にみんなで食べちゃお」
と言いながら目を輝かせる彼女に申し訳ないと思いつつ、
「それでね…」
と、口を開いた俺。
「ストップ!…なんか、いやぁな予感がするんですけど」
俺の言葉を遮り眉をひそめる彼女。
「今すぐできる?」
持っていた営業用の資料を見せると、
「もぉーっ!やっぱり。ずるいですよ、お菓子で釣るなんて」
そう言って頬を膨らませた彼女が、いつものように俺の好きな仕草を見せてくれた。
髪をひとつに束ね、パソコンと向き合う彼女を、やわらかな春の陽射しが包み込む。