君がいた季節
彼女に出逢って気付いた。
愛にもいろんなかたちがあるんだ、と。
この想いを彼女に伝えたなら、どれだけ楽になれるのかと、思ったりしたけど。
伝えることはできなかった。
「ごめんなさい」
そのひと言を聞かされるより、
この先ずっと、ぎこちない笑顔を見せられることのほうが、何倍も、何十倍も怖かった。
彼女の笑顔を失いたくなかった。
俺に見せる笑顔は、心からのものであって欲しいから。
この想いは、俺の心の中だけに。
それが、彼女への愛のかたち。
この先俺が、他の誰かを好きになっても、彼女を好きだった気持ちに偽りはない。
この春、彼女は結婚する。
俺の知らない誰かと、永遠の愛を誓い合うんだ。
【END】