君がいた季節
もうそろそろ来る頃だ。
俺は部屋の時計を見て大きく伸びをすると、鞄を手に部屋を出た。
「……おかしい」
いつもなら、玄関のドアを開けっ放しにして立っているはずなのに。
「まだいたの?早くしないと遅刻するわよ」
玄関に座り込んでいた俺に、母親の冷たい視線が突き刺さる。
「……もう行く」
靴も履き、鞄を抱え、準備万端なのに。
5分経っても10分経ってもあいつは来ない。
仕方なく玄関のドアを開け外に出る。
雲ひとつない青い空。
眩しい日の光に目を細め携帯を開いた。
『ただいま電話に…』
「なにやってんだ?」
メッセージを残すまでもない。
俺は自転車にまたがると、学校とは反対方向へと向かった。