君がいた季節


もうそろそろ来る頃だ。


俺は部屋の時計を見て大きく伸びをすると、鞄を手に部屋を出た。


「……おかしい」

いつもなら、玄関のドアを開けっ放しにして立っているはずなのに。


「まだいたの?早くしないと遅刻するわよ」

玄関に座り込んでいた俺に、母親の冷たい視線が突き刺さる。

「……もう行く」


靴も履き、鞄を抱え、準備万端なのに。

5分経っても10分経ってもあいつは来ない。

仕方なく玄関のドアを開け外に出る。


雲ひとつない青い空。

眩しい日の光に目を細め携帯を開いた。


『ただいま電話に…』


「なにやってんだ?」

メッセージを残すまでもない。

俺は自転車にまたがると、学校とは反対方向へと向かった。

< 26 / 109 >

この作品をシェア

pagetop