君がいた季節
べつに頼んでなんかないし?
おいおい。
毎日、俺の自転車の後ろに乗って登校してたくせに。
今さらそれはないんじゃねぇの?
「あのなぁ、常識で考えてみろよ?フツー……」
ふと、周りの生徒が俺たちのやり取りを見てクスクス笑っていることに気づく。
ガシガシと頭を掻いた俺は美佐子の腕を掴むと廊下を指さし、
「あー…。ちょっとだけいいッスか?」
と、仕方なくお願いするのだった。
だって、そうでもしないとこいつは動かない。
「もー…。なんなの?」
面倒くさそうに立ち上がった美佐子が、これまた面倒くさそうに歩いて廊下に出る。
そのとき、フワッと。
美佐子が作り出した風に乗り、今まで嗅いだことのない甘い香りが俺の鼻先で舞った。