君がいた季節
「時間ないじゃないですか!もーっ。いっつも急なんだから」
頬を膨らませ、机の上の伝票を慌てて片付けはじめる彼女。
「仕方ないよ。先方が急に、来てくれって言うもんだから。ほら、前に一度作ってもらった資料と中身はほとんど同じだからさ。データ、残ってるよね?」
と言葉を並べたものの、彼女の耳には届いていないようだ。
「今回だけですよっ。次はやってあげないんだから」
そう言って唇を尖らせた彼女。
髪の毛をひとつに束ねてクルクルとねじり、制服の胸のポケットに挿してあったヘアクリップで毛先を器用にとめた。
俺は、彼女を怒らせてしまったことも忘れ、その姿に見惚れていた。