君がいた季節
「矢野って、……美佐子と、マジで付き合ってんの?」
ついさっき美佐子から聞かされたばりだというのに、わざわざ矢野に確認する。
もしかしたら美佐子の勘違い、ってことも考えられるからだ。
ノートで自分の顔をあおいでいた矢野が、
「あぁ、まぁね」
と言って笑顔を見せる。
「………」
やっぱ、ムリだわ。
前々から気にくわなかったんだ。
こいつの、この気取った笑顔。
それが今日は、いつも以上にうさんくさく思えてならない。
「へーっ。あぁ、そう。そっか、そっか。
あー…、なんつーか、その……。まぁ、あれだ。
その、………美佐子の、どこがよかったわけ?」
「……どこ、って」
パタパタとうちわ代わりにしていたノートを机の上に置いた矢野が、
「んー……。顔?」
と答えた。