君がいた季節


「………顔?」


それだけ?

たったの、それだけ?


爽やかそうな笑顔でサラリと答えたけど。

なんだ、その頭カラッポな答えは。


こいつのこと、やっぱり好きになれそうにない。


「……っていうか、さ。矢野って、意外とシュミ悪いのな。知ってる?あいつ、口も悪けりゃ性格も最悪で。昔っから、あんなカンジで。
俺に、メーワクばっかかけてて……」


矢野は俺の言葉に首をかしげると、

「そう?そうは思わないけどな。けっこうかわいいとこあるよ」

って。


また、うさんくさい笑顔を見せる。


美佐子の、似合いもしないピンクのリップも、甘ったるい香りの香水も。

全部こいつのためだったのか。


そう思うと腹が立つ。

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