君がいた季節
「大和!」
バイトを終え、疲れた体を引きずるように帰宅した俺の目の前に、あいつの姿があった。
風呂を済ませたのか、まだ乾ききっていない髪もそのままにして、
「今から雑誌、買ってきてくれない?今日、発売日だったの忘れててさ」
と言う。
矢野と付き合いはじめてからというもの、美佐子は矢野にベッタリで、俺のことなんてまるっきり眼中にない。
だから、こうして顔を合わせるのは随分と久しぶりのことだった。
こんな遅くに、そんなくだらない用件でわざわざ来るなんて、なに考えてんだ。
ガレージに自転車を停めた俺は、
「アホらし…。自分で行けよ」
美佐子の顔も見ずにそう答えた。