君がいた季節


「大和!」

名前を呼ばれ、教室の入口に目をやると、咲季が今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ていた。

咲季は美佐子の友達で、こいつもまた、美佐子に付き合って講習を申し込んだ。

隣の教室で美佐子と一緒に講習を受けていたはずだ。


帰りの支度を済ませた俺は、鞄を小脇に抱え咲季の目の前に立つ。

「なに?」

「…あ…あのね、美佐子がね…」

そう言うと下を向き黙り込んでしまった。

「美佐子がどうした?」

と聞いてはみたものの、

美佐子のことなら矢野に頼んだほうがいいだろう

と、つい意地を張ってしまう。

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