君がいた季節
体育館の裏で膝を抱え、体を丸めて座り込んでいる美佐子の姿を見つけた。
「美佐子…っ!」
いつもより小さく見えるその体が、俺の声に反応する。
「美、……佐、…?」
肩で息をしながら、額から流れ落ちる汗もそのままに、ゆっくりと美佐子に近づく。
「おまえ、……泣いてんのか?」
丸まった体が小刻みに震えていたから、思わずそう声をかけてしまった。
「…っく……ひっ、く…」
声を押し殺し泣いていた美佐子。
その泣き声は次第に大きくなり、しまいには、
「わーーん」
と、子どものように声をあげて泣き出してしまった。
「……美佐子」
初めて見た。
こんなふうに泣きじゃくる美佐子を、今まで一度も見たことがなかった。
俺は美佐子の隣に腰を下ろすと、ただ黙って美佐子が泣き止むのを待っていた。
そうすることしかできなかった。