君がいた季節


「…なんで…あんたが…来る、わけ?」

しばらく泣いていたものの、落ち着きを取り戻したのか、額を膝にくっつけたまま憎まれ口をたたく。

「咲季が、さ……。俺に、って」

いつものように接してやりたいのに、そう口にするのが精一杯だった。


「あっ、そ……」

そう言って黙り込んでしまった美佐子に、思いきって聞いたんだ。


「矢野と、……ケンカでもしたのか?」


少し間をおいて首を横に振った美佐子が、

「………フラれた」

そう言って、ようやく顔をあげた。

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