君がいた季節
「はーっ。思いっきり泣いたらスッキリしたー」
久しぶりに後ろから聞こえてくる美佐子の声が心地よかった。
ペダルの重みも、俺のシャツを握る手の温もりも、全部。
やっぱりこうでなくちゃ、って思ったりしてさ。
「あのさー、大和にお願いしたいことがあるんだけど」
嫌だと言ってもムダなんだとわかってるけど、素直に「いいよ」とも言えない。
「えー…。なんだよ。それって、面倒くさいこと?」
「面倒くさい……?」
少しだけ言うのをためらった美佐子が、ゆっくりと口を開いた。
「………雪、…降らせてくれない?」
「………えっ!?」
ブレーキをかけ、後ろを振り向く。
「おまえ、…覚えてたのか?」
「あたりまえでしょ。だって、めちゃくちゃ嬉しかったんだもん」
そう言って、美佐子は少し照れた顔して笑った。