君がいた季節
美佐子が心を開いてくれた、あの夏の日。
『言うこときいてくれたら遊んであげる』
膝を抱えて体を小さくした美佐子が、俺を見上げてぶっきらぼうにその言葉を口にした、あの日。
『雪、降らせてよ』
美佐子は俺に無茶な願い事をした。
真夏に雪!?
できるわけないじゃん。
はじめは、なんてくだらない願い事だ、とバカにしたんだけど、そんな考えはすぐに消えてなくなった。
美佐子があまりにも真剣な目をしてたから。
無茶な願い事だとしても、なんとかして叶えてやろうと思った。
ちょっとだけヤケクソになってたのもあったんだけど、一番の理由はもっと他にあったんだ。
気が強くて、プライドが高くて、人一倍、淋しがりやの美佐子の笑顔が、どうしても見たかった。