君がいた季節
「…ったくよー。めんどくせぇんだよなぁ」
なんてブツブツと文句を言う俺の後ろで、俺に、
『ありがと』
なんて。
風に飛ばされてしまいそうなほど小さな声で。
『あんたがいてくれてよかった』
だなんて。
もう、それで充分だ。
『ただの幼なじみ』
それは、この先もきっと変わらない。
いつか俺とおまえが、じいちゃん、ばあちゃんになって。
それでもこうして笑っていられたなら。
その時は、
『おまえが好きだった』
と伝えよう。
おまえはどんな顔をするだろう。
それを楽しみに前進するのみ。
俺はおまえを後ろに乗せて、自転車を走らせる。
今日も明日も。
おまえに、大切な人ができるまで。
【END】