君がいた季節


「お待たせしました」

机に向かいスケジュール帳に仕事の予定を書き込んでいると、丁寧に綴じられた資料が視界に入る。

「ごめんね。ありがとう」

そう言って彼女を見ると、

「間に合って良かったですけど、ね」

左の頬を膨らませ、わざと怒った表情をして見せる。

俺は、申し訳ないと頭を下げたあと、机の引き出しを開けて用意しておいた物を取り出した。

会社に戻る途中、コンビニで買った彼女へのご褒美だ。


「よろしければどうぞ」

「えっ!?……いいんですか?」

「うん。急がせちゃったし」

「わぁっ、うれしーっ。これ、買おうかどうしようか迷ってたんですよ」


さっきまでの怒った表情は何処へやら。

新商品のチョコレート菓子を手に、ニコニコ顔の彼女。

彼女の笑顔につられるように、俺の口元も自然と緩んでしまう。

< 6 / 109 >

この作品をシェア

pagetop