君がいた季節


このあたりじゃ名の知れた、進学校の制服を着たひとりの女子高生。

そいつが、きちんと揃えた両膝に手を置き、うつむいてシクシクと泣いている。


公園を出るには、そいつの横を通り過ぎなければならないんだ。


気づかれないように、そっと。


自然と歩くスピードが落ちる。

足音を立てないように、静かに歩く。

「…ヒック…ヒック…。ズズーッ。…ヒック…」

そいつに近づくにつれ、泣き声はハッキリとしたものになった。


これだけ泣いてりゃ、気づかれないだろうな。


そう思ったら、この状況を楽しむ余裕さえ生まれてくる。


テストで悪い点でも取った、とか?

落ち込むことないじゃん?
次、頑張ればいいことなんだし。


なんて。

泣いてる本人にしてみたら大きなお世話なんだけど。

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