君がいた季節
「せっかくだから、時田さんも」
ペリペリと箱を開けた彼女は、中からサクラ色の包みを数個取り出すと、俺の手のひらにそっと置いた。
そして、開いたままのスケジュール帳を指さすと、
「前から思ってたんですけど。時田さんの字、きれいですよね。伝票入力のときも、資料作るときも。いつも見惚れちゃう」
と、目を細めて言った。
「綺麗?そんなことないよ」
字を褒められただけなのに、胸の奥がムズムズとくすぐったい。
年甲斐もなく、とでも言うのだろうか。
彼女の言葉に照れてしまった。
「えーっ、そんなことありますよ。ふふふ。
すっごく見やすくて助かります。それに比べて三井さんの、………あ。」
余計なことを口走ってしまった、という顔をして口に手をあてた彼女。
その仕草に、今度は俺が目を細めた。