君がいた季節
「助かっちゃった」
俺の横にストンと腰を下ろしたそいつは、頬に残る涙のあとを手で払うようにして拭った。
こっちは、いい迷惑なんですけど。
そいつから視線を空へと移してため息をついた。
うっすらと、でも確実に夜に染まっていく空が、果てしなく続いていた。
「ありがと、ね」
横から不意にそう言われて、わけもわからず、
「……あ、……はい」
なんて、バカみたいに応えてしまった俺。
ローファーの裏で足元の砂をジャリジャリとこすりながら、そいつがクスクスと笑う。
そして、
「キミがここを通ってくれなかったら、あたし、あとどのくらい泣いていたか、わからないもん」
と言うと、俺と同じように空を見上げた。
チラッと盗み見したそいつの横顔は、今にも泣き出しそうな、悲しげな表情をしていた。