君がいた季節


「あはは。確かに。あいつの字は最悪だよな。
言っておくよ」

「あ……、その、なんていうか。せめて数字だけでもきちんと書いてくれたらな、って。
ちゃんと確認しなかった私もいけなかったんですけど。なんていうか……ですね、金額の間違いをしちゃうと……」


いつだったか、経理部の主任に叱られているところを見かけたことがある。

訂正処理自体そんなに手間のかかることではないのだろうけど、単純なミスほどネチネチと言いたがる人間もいるのだ。


「あのオバサン、恐ろしいからね」

からかうような俺の言葉に苦笑いしながら彼女が肩をすくめた。


「あ。そうだ。アヤちゃんさ、」

俺の言葉を遮るように机の隅に置かれている電話が鳴った。

彼女との会話を中断させられて不機嫌になりつつも、受話器をあげ、内線のボタンを押す。

「はい、時田です」

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