君がいた季節
トクン、トクン、と脈打つ心臓。
俺の不格好な字と、わずかに右に傾いた梓の字。
ふたつ並んだ名前を眺めていると、なんだかみょうに恥ずかしさがこみ上げてきた。
「ね、何年生なの?」
梓が呼吸するたび、微かに震える空気ですら、俺の心臓の動きを速める。
「……中…2」
そう言いながら、手のひらでふたつの名前を消し去った。
「中2!?えーっ、見えない!」
「……いくつに見えんのさ」
「中3」
「……たいして変わんねぇじゃん」
「いや、変わるよ、変わる!」
何故か目をキラキラと輝かせている梓。
「あ、っそ」
もう、何も言うもんか。
相手にしない。
「そろそろ帰る」
手についた砂をはらいながら、ベンチに置きっぱなしだったスクールバッグを取りに向かう。