君がいた季節
これ以上ここにいたら。
これ以上、こいつと一緒にいたら、どうにかなってしまいそうだ。
何も言わずに立ち去ろうとした俺を、
「あっ!ねぇっ」
梓が再び呼び止める。
「今度は、なんだよ」
ため息まじりに吐き出した言葉にも、梓は動じない。
「明日も、来る?」
「……え?」
「明日も、ここに来る?」
首を傾げ、やわらかな表情で俺からの返事を待っている。
キンモクセイの甘い香りが、胸をくすぐる。
頭の奥が痺れてきて、指先の震えが止まらない。
「……毎日、通ってるから」
ただ、それだけの言葉を口にするのが精一杯で。
「そっ。じゃあ、また明日ね」
小さく手を振る梓に背を向けて、
明日も来るのかよ。
なんて苦笑いなんかしたりして。