君がいた季節


「知ってた?キンモクセイの花言葉ってね、“謙虚・真実・初恋”なんだって」

昨日と同じ。

ペンキの剥げてしまったベンチに腰を下ろし、梓が得意気に話す。


「わざわざ調べたの?」

俺も俺で、昨日と同じ。

梓の隣に腰を下ろし、何度となく調子を狂わされていた。


「だって、気になったんだもん。……あっ!そうそう!虎太郎くんてさ、甘いモノ好き?」

こんなふうに、コロコロと話が変わる。

「……嫌い」

と返事をしようが関係ない。

「これね、最近のお気に入りなのー」

そう言ってスクールバッグの中からピンクのポーチを取り出すと、鼻歌をうたいながらファスナーを開ける。

すると、中からは大量のアメが姿を現した。

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