君がいた季節
「あげるー」
梓は、手に掴めるだけ掴んだアメを俺の目の前に差し出した。
指の間からこぼれ落ちそうなアメを受けようと、とっさに広げた手のひらに、梓はニコニコしながらアメを落としていく。
「いっ、いいよ。いらないって…」
と言う俺の手を、梓は両手で包みこんでニッコリ笑う。
手の中に閉じ込められたアメたちが窮屈そう。
梓の両手に包まれた俺の手は、言うまでもなく、緊張していた。
「いいの、いいの。遠慮しないでー。たくさん食べて大きくなってね」
そう言うと、梓はポーチからひとつアメを取り出し、包みを開けて口の中に放りこんだ。