君がいた季節
「1268円になります」
店員に、はーい、と返事したあと、ゴソゴソと財布の中身をあさる理乃。
「あ。ナオくん、悪いけど100円貸して~」
「……」
俺は制服の後ろのポケットに突っ込んであった財布に手をかけた。
「あー…。スミマセンけど、肉まん一個追加で」
そう言った俺を、見上げた理乃に、
「ついでだから、チョコの分も一緒に払えば?」
財布から千円札を二枚出し、渡す。
「えっ、…えっ!?」
慌てふためく理乃の頭をポンポンと軽く叩き、店の外に出た。
うっすら灰色の雲に覆われた空。
全身を撫でる風は冷たくて、微かに冬の匂いがした。
「もうすぐ、だな…」
思わずこぼしたひとことが、フワリと宙に舞った。