君がいた季節
「もーっ。ナオくんてばかっこいいんだからっ」
コンビニから出てきた理乃が、俺の背中をバシバシと叩く。
「うるせぇ…っ。ほら、かせ」
右手の手のひらを上に向ける。
「あ、うん」
理乃が、ビニール袋に入れられた肉まん入りの袋を取り出し、俺の手のひらの上にのせた。
ほんわかと食欲をそそる匂いが辺りに漂い、ホカホカとした温もりが手のひらを温めていく。
「ありがとう、ね」
理乃はそう言うと、俺のブレザーのポケットに手を入れ、そこに小銭を落としていった。
その間に俺は肉まんを袋から出し、ふたつに割ってフーフーと息を吹きかけていた。
そして、
「食う?」
冷ました肉まん半分を理乃に差し出した。
「食う!」
猫舌の理乃は、さらにフーフーと息を吹きかけ、にこにこしながら肉まんをほおばった。