無音の音
時計は、三時五十分を告げるものだった。

「あ~あたし行かなきゃ。」

四時までに体育館にいないと、今日の単位はもらえない。

単位のためにわざわざ来たのに、もらえないなんてあまりに馬鹿馬鹿しすぎる。

茜と別れるのは非常に惜しいけど、仕方なかった。

「そうですね。もう四時になりますね。」

茜は、そう言いながらも席を立とうとしない。

こんな所でこんな時に一人で絵を描いているくらいだし、彼女にはきっと学校祭なんて関係ないことなのだ。

その推測は、間違っていない気がした。

茜は、ここで絵を描くことがすべてだ。もしかしたら学校じゃなくてもいいかもしれない。

だって茜だから。

知り合ったばかりの一人の少女に、私はなぜか確信を抱けるまでになっていた。

私は戸口まで歩いていく。

恐らく、茜は私を見ていないんだろうなと思った。

少し悲しくなったけど、それは多分事実だ。
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