泡沫の夜
Monday
今日もいつものように、誰よりも早く出社してフロアの空気を入れ替えるごとく、窓を開けて回った。
清掃業者が入った後だから、気持ち程度机周りを整えて、給湯室のポットに水を入れる。
「おはよう、いつも早いね」
1人、2人と出社してくる中で、経理部の部長が給湯室を覗いて声をかけてきた。
「おはようございます。……コーヒーですか?」
部長自ら給湯室へ来たわけは、彼が日課としている仕事前のコーヒーを求めてだとすぐに分かった。
「そう。飲まないと頭すっきりしないんだよねぇ……」
そう言いながら、戸棚の奥からKona coffeeを取り出す。
彼専用のコーヒーだ。
彼専用とはいうものの、彼はコーヒーメーカーに軽く5ー6杯は作れる量を入れてお裾分けしてくれる。
早くに出勤してくる人達の中には、このコーヒーのご相伴に預ろうという人も少なくないのだ。
部長は自分のカップにコーヒーを注ぐと
「あとはどうぞ」と言いながら給湯室を出ていった。
「いただきます」
普段はそう言いつつも遠慮するのだけど、今日はその香りに誘われて手を伸ばした。