泡沫の夜



あの日、多分私はいつもの私とは少し違っていた。

無理やり参加させられた飲み会は、それでも少しはお洒落して周囲から浮かないように努力はしていたつもりだった。

ほんの少し濃いメイクと、ヘアアレンジ。いつもとはほんの少しだけ違う自分。

でも、あっさり「地味」の烙印を押されて落ち込んだ私は早々に抜け出し、その場所から少し離れた路地裏のバーを訪れた。

落ち込んだ気分のまま帰りたくなくて、逃げ込んだその店は、少し落とされた照明と落ち着いた音楽が私を安心させてくれた。

恐る恐るカウンターに腰かけた私に優しく声をかけてくれたマスターの、気持ちを軽くさせてくれる言葉のいくつかに、ささくれ立った気持ちが癒されて行くのがわかった。

初めて飲んだカクテルに、ほろ酔い状態の私に声をかけて来たのが理央くんだった。

初めは分からなかった。

薄暗い照明と、アルコールと、マスターによって癒されて心が薄着になっていたせいだと今では思う。

礼央くんは、専ら聞き役だった。

上手く会話を振ってくれたり、笑わせてくれたり。

楽しい時間だったと思う。




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