泡沫の夜
Friday morning
金曜日の朝、私は出勤前に会社近くの◯タバに寄って、カフェラテを2つテイクアウトした。
勿論自分で2つ飲むわけではなくて、もう1つは敷島さんへ渡すものだ。
「たまにでいいから」と言った彼は、翌日水筒に入ったコーヒーを持ってきた。
自宅で淹れてきたのだと話し、紙コップ持参で現れた。
わざわざそこまでしてもらって断ることもできずいただいたのだけど、そうなると次はこちらがということになる。
彼もまた私の提案を退けることもなく、「じゃあ、明日は山瀬さんに頼もうかな」ときた。
それだからと言って自宅でコーヒーを淹れてくる事はできなくて、近場の◯タバに寄ってくることにしたのだけど……。
これが毎日続くのだろうか?と、戸惑いは増すばかり。
これが、理央くんなら……そう考えて頭をブルブルと振った。
敷島さんを理央くんに置き換えるなんて、敷島さんにも失礼だし、あり得ない現実に虚しくなるだけだと思い直した。
というか、敷島さんはどういうつもりなんだろう?
彼の少し強引な所に戸惑いはするものの、彼の言動に私を揶揄っているようにも感じない。
押し付けがましさは感じなくて、一歩も二歩も下がって自然な形で隣にいてくれる。
コーヒーを飲むあの時間以外にも、ふと気付くと隣にいる。
それも決まって私が他人の力を必要とする時に、彼はそれにいち早く気づいてくれるのだ。