泡沫の夜



「山瀬さんって、敷島さんと付き合ってる?」

ランチタイムを一緒にする同僚が、社食のランチを口に運びながら不意に尋ねてきた。

「えっ?」

「噂になってるよ?毎朝仲良さげにコーヒー飲んでるって」

同僚の和田 朋子(わだ ともこ)と、八原 楓(やはら かえで)の2人は周囲をちらりと見た後遠慮がちに話を続ける。

どちらかと言えば物静かで噂話に翻弄されるようなタイプの人達ではない。

こうして聞いてくる間も、興味本位というよりは純粋に真相を知りたいだけなのだと思わせる様子に、私も落ち着いて言葉を返すことができた。

「付き合ってないよ。コーヒーは、え、と、なんとなく?」

「なんとなく、異性の同僚とコーヒーを一緒に飲むタイプではないよね?山瀬さんって」

「そうかな……まぁ、そうかも」

確かにその通りだと頷くしかない。

「でも、敷島さんっていいと思うけどな」

和田さんがニコッと笑い、そう続けた。

「うん。あの人はいいひとだと思う。穏やかな山瀬さんと雰囲気も合うし」

「いいひとで終わりそうなタイプだけど、」

隣で八原さんが小さく笑った。




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